美容業界の課題とテクノロジーによる変革への挑戦
✂️

美容業界の課題とテクノロジーによる変革への挑戦

業界の現状と課題について

私たちは美容業界(その中でも特にヘアサロン)を事業ドメインとして取り扱っています。簡単にドメインの定量的な面を要約すると…
  • 日本全国におおよそ25万店舗あり、コンビニのおおよそ5倍存在している
  • 美容師は約50万人(免許保有者総数は100万人)、毎年1.5万人ほど新規に免許を取得
  • 女性の85%、男性の35%が定期的に利用をしており、男性の美容室利用は拡大傾向
  • 市場規模は1.4兆円規模とそこそこ大きな市場
となっております。
 
日本全国にかなりの程度普及していると言って良い美容室ですが、しかし業界としては大きな課題だらけです。

📑 アナログな現場

美容室ではテクノロジーの導入が進んでおらず、顧客管理の80%以上が紙媒体で行われております(一部ではFAXがまだ現役で使われていたりもします…)。そのため非効率な業務フローが改善されていなかったり、良い経営を実現するためのデータ資産の活用が難しい状況です。
 
新規開業から1年以内で60%が閉店、3年以内に90%が閉店するなど、経営の難易度が非常に高い業態であるにもかかわらず、テクノロジーの恩恵を受けていない現状があります。

💇 消費者と美容室のマッチング

美容室は美容師個人が施術を行う、業務の属人化が多い業態ではありますが、消費者とのマッチングはうまくいっているとは言えません。
 
美容業界の初回のリピート率はおおよそ20%程度と、5人に4人は初回の施術に不満を抱えてしまっている状態です。またアンケートでは「過去に二度と施術をして欲しくない美容師と出会ったことがある」との設問に55%の方が「はい」と回答しています。
 
立地や価格帯、デザインイメージで選ばれていることが多い一方、本当に消費者にとって満足できる美容室体験が提供できているとは言えないのが現状です。

📉 労働環境に関連する課題

先にも美容室の高い廃業率を紹介しましたが、それ以外にも美容室に関連する課題を紹介します。
 
例えば新卒の美容師は就職の初年度離職率30%、3年以内離職率50%(平均37%と平均に比べて35%以上高い)と労働環境が良いとは言えません。これは平均初任給が16万円程度であり、労働時間も長いことが要因と考えられます。
 
他にも事例を挙げるといくらでも出てきます。IT業界の基準から見たらおかしなことだらけです。そこそこ大きな市場規模を誇る美容業界で、大きな問題がそこかしこに散見されています。

課題はなぜ解決されていないのか

ではなぜ、その課題は解決されてこなかったのか?という部分にここから触れて行きたいと思います。
 
この10年で美容業界に変化をもたらしたITサービスはWeb経由の予約だけ、と言っても過言ではありません。その他のソフトウェア関連企業は確かな変化をもたらすほどではなかった、もしくはその前に業界から撤退してしまいました。その要因は以下が挙げられます。

💸 持続的に収益を上げることが難しい

顧客になりえる美容室に焦点を当ててみると、美容室の事業規模そのものはそこまで大きくありません。そのため、ITサービスに割り当てられる予算規模は小さなものになってしまいます。
 
一方、25万店舗存在している美容室はそのほとんどが個人店~小規模店です。そのため収益を上げるための営業活動自体は個々に店舗ごとに実施する必要があり、労力そのものは普通以上にかかってしまいます。
 
そのため「1店舗から期待できる収益は低いが、営業コストは高くつく」儲かりにくい業界であることが要因の1つと考えられます。
 
また、この儲かりにくさのせいで資金調達を前提としているようなスタートアップ企業とも相性が悪いです。PMFまでプロダクトを作り込み、PMFが見えたら販管費を一気に投下してスケールし切るやり方は、スケールする前に資金が不足してしまう結果となります(し、事実何社もこの道を辿ってきたのを見てきました)。

💥 プロダクトのMVPが肥大化する

すでに広く展開されているITサービスがほとんどないため、"巨人の肩に乗る"ような価値提供が難しいのも美容業界の特徴です。
 
例えば「紙で実施している顧客管理を電子化したい」となっても、その顧客情報には売り上げが紐づいていて、しかも予約情報も紐づいている。さらには売り上げ情報には給与計算も紐づいていて…と、MVPのスコープがどんどん広くなってしまいます。
 
また、業界特有のドメイン知識が多分に出てきますので、どっぷりと美容ドメインに入り込む必要があります。例えば汎用的な顧客・会計・予約管理のサービスや多くのHorizontal SaaSプロダクトが存在しますが、抽象化されすぎたサービスだと拾いきれないニーズがそこにあります。

美容業界の新しい情報インフラになる

ここまで書いてきたように、美容業界は十分大きくそして顕在化された課題が数多く存在しています。そして、それがこれまで解決されなかった難しさもあります。
 
わたしたちはこの状況を踏まえて、テクノロジーの力を信じて「美容業界の新しい情報インフラになる」という会社のミッションを掲げています。
もし美容業界に業界全体を横断するような情報インフラが存在したら、現在の問題がどのように解決できるでしょうか?
 
店舗の視点から見れば業務効率化を推し進め、その過程で蓄積されたデータを統合し経営に資するインサイトに転換できます。そのプロセスの中では美容師の働き方や待遇改善も進められるでしょう。
 
消費者の観点から見れば、より自分にフィットした美容室/美容師を見つけることができます。毎月自分の価値観を深く理解してくれながら、美容を通じて関わりを持てる人がいることは本当に幸せな体験です。また、サロンシャンプーはじめ良い商品を体験できるようになるかもしれません。
 
他にも現在顕在化している問題の解決にとどまらず、"巨人の肩"として派生した多くのサービスが美容業界を変えて行くことになると思います。わたしたちはそれを心の底から信じて、テクノロジーの力を使って実現させていきます。
 
美容業界全体を再定義するためにも、これから挑戦していきます。